信州ブレイブウォリアーズ試合観戦日記
バスケットボールを初めて観た私が、小説風に書いてみました。
針の穴を通す。
そのことを、時にひとは「神業」と呼び、熱狂し、感嘆する。
希少な事象。非凡な才能。紙一重の成功。
本来、きわめて起こりにくい確率が起きるからこそ、私たちに興奮をもたらすはずの言葉を、
バスケットボールはいとも簡単に覆してくれる。
2月4日。場所はホワイトリング。
信州ブレイブウォリアーズ VS 川崎ブレイブサンダース。
合計40分の試合のなかで、数十回も、バスケットボールがお互いのネットを揺らした。
見せ場、見せ場、見せ場の連続。
休むことなく攻守が反復し、緊張と緩和が錯綜し、神業が応酬される。
飽きることを許させない、エンターテインメントの極致だ。
人間離れした跳躍で、貪欲にゴールを叩きこむダンク。
鋭い反射神経と切り返しで、敵陣をいなしてきめるレイアップ。
そして、己との戦いを制するスリーポイント。
ブレイブの攻勢。ドリブルが敵陣に止められた。
瞬時に動いたのは熊谷選手。
相手の心の隙間をつき、阻まれている味方の後ろ側に、あえて大きく下がった。
阿吽の呼吸。ボールが渡る。パスが通った・・・
フリーだ!
6.75mの円の外から、熊谷選手は冷静に、シュートを放った。
私たちの目線は釘をさされたように、そのボールが描くアーチを見つめ、
いまここに重力と物理を感じ、音もなくすうっと吸い込まれるようなゴールに、息を吞むのだった。
「すごい・・・」
その言葉は、シュートを決められた側を応援しているであろう観客から漏れ聞こえた。
スポーツが、バスケットボールが、選手たちのプレーが、会場をひとつにした瞬間だった。
本社スタッフ K・K